私が葬儀屋に勤務していた時代、お葬式の打ち合わせでいろいろな方のお悩みを聞いてきましたが、そんな中で多かった悩みの一つに遺影写真があります。
例えば以下のように
- 写真を撮られるのが嫌いな人だったため写真がない
- 若い頃の古い写真しかない
- 免許証しか写真がない
- 故人のイメージとはかけ離れた写真しかない
- 写真がどこにしまってあるのかわからない
といった理由で遺影に使える写真が無くご相談を頂く機会が多々ありました。
とくにご高齢の方のなかには写真を撮られるのが恥ずかしく、思い出を写真に残す習慣が無かったという人が多くいらっしゃいます。
しかし遺影写真は葬儀の後もずっと残り続けるもの。
遺影写真選びは慎重に行いたいところです。
遺影写真の大きさ・サイズ
四つ切(20×27㎝)
一口に遺影写真といっても用途によっていくつかのサイズがあります。
出棺のときに遺族が持ったり、葬儀後に自宅の仏壇付近に飾られる四つ切が最も一般的な遺影写真のサイズです。
キャビネ(11.5×16.5)
葬儀屋に遺影写真の準備を依頼すると枕飾りや葬儀後に仏壇以外の場所に置きやすいキャビネサイズのものがセットでついてくることがあります。
仏壇のない家や、遠方からきて写真を持ち帰りたいという人にもお勧めです。
祭壇用
祭壇が大きく収容人数の多いホールだと、後ろの席に座る人からは四つ切り写真は顔が小さく見えにくいため、大きなサイズの遺影写真を別で準備することもあります。
様々なサイズへ変更できますが、基本的には祭壇用に額縁が用意されているのでそのサイズに合わせることになります。
遺影写真の選び方
一番故人らしい写真を
遺影に使う写真に決まりはありませんが、長く残るものなので手元にある写真の中から一番最近のもので故人らしい写真を選びましょう。
いくら最近の姿だとしても、入院生活が長く闘病で苦しそうな写真を飾るよりも元気だったころのものの方が本人らしさがあるといえます。
かといって若すぎる写真も避けたところです。
古すぎる写真は付き合いの短い参列者がみてもパッとしません。
古すぎず、故人の面影が残る写真を探してみましょう。
鮮明に写っているもの
遺影写真を選ぶにあたって写真の鮮明さは特に重要です。
旅行先での集合写真など顔が小さい写真を遺影用に引き延ばすとぼやけてしまい、誰の写真なのか分からなくなってしまうことも考えられます。
免許証の顔写真を目安として、それ以上のサイズと鮮明さのものを探しましょう。
写真の加工・修正
良い表情で鮮明に写っている写真があったものの、一部見切れてしまっていたり、服装が気に入らないといった場合も加工して遺影写真にできます。
基本的に遺影写真に使うのは首から上の部分のみで、見切れてしまっている服の部分は関係ありません。
遺影写真の首から下の衣服は着せ替え加工で洋装や和装、普段着等いくつかのパターンの中から選ぶことになるので遺族同士で相談して気に入ったものを選びましょう。
また、きれいに着飾っているので首から下もそのまま使いたいときは、そのように要望すれば使ってもらうこともできます。
背景も単色やグラデーション加工、季節ごとの花や自然の風景など様々なパターンの中から選ぶことができます。
無難な単色や故人の誕生日や命日となった日の季節に合わせたり、好きな花や景色に近い背景を選ぶのが一般的です。
葬儀担当者の判断で適切な加工をするか、遺族が画像加工のサンプルを見せてもらって選択することになります。
自分で選びたいときは必ず申し出るようにしましょう。
頭や髪の一部が見切れている場合も加工して使える可能性があるので一度、葬儀担当者に相談して下さい。
顔の一部が見切れてしまっているものは遺影写真にはふさわしくありませんが、頭部の見切れなら加工で付け足して使える可能性があります。
生前から準備をしておくこと
終活というワードを聞く機会が増えてきて、生前に遺影写真を準備しておく人が少数ながらいらっしゃいます。
葬儀が終わって納骨が済むと、形として残るのは位牌と写真のみ。
それなら本人が納得した写真を使うのがベストではないでしょうか。
残された遺族が困らないために、自分の望んだ写真を使ってもらえるよう生前のうちからお気に入りの写真を準備しておきましょう。
亡くなる前に写真屋で遺影用の写真を撮影することができます。
デジカメやスマートフォンの写真でも拡大して遺影写真に使えますが、それらと比べるとプロが撮る写真の綺麗さは一目瞭然です。
遺影写真の作り方
遺影写真を自身で作成することも可能です。
- 遺影にする写真
- 写真を加工するためのPC・ソフト
- 写真を加工するための素材(背景・衣装など)
- 写真を加工するための技術
- 印刷用のプリンター
これらの環境を整えられるのであれば自分や家族で納得のいく遺影写真の作成を行っても良いでしょう。
あとは、出来上がった写真をフレームに収めたら完成です。
遺影写真Q&A
フレーム・額縁・写真の枠
遺影写真を作る際はフレームにもいくつか選択肢があります。
男性は黒や茶色、女性は白や薄紫、ピンクが一般的ですが好みで選んでも構いません。
選択できる場合は好きな色のフレームで作ってもらいましょう。
また、枠上のリボンの有無を選択できますが、最近は男女ともにリボン付きのフレームを使う人が増えてきました。
遺影写真の値段
遺影写真の用意を依頼する場合は、撮影から加工などもろもろを含んで2〜3万円ほどかかるのが一般的です。
葬儀社に依頼する場合はプラン料金内に含まれるのか別途追加料金がかかるので確認しておきたいです。
写真が無い場合・飾りたくない場合
葬儀中は多くの参列者が、故人が健在だったころの姿を思い浮かべます。
亡くなられる直前の元気のない姿や、数十年以上前の若い頃の写真が祭壇に飾ってあると悲しくなったり誰だかわからないと思う人も居るかもしれません。
大切なのは亡くなった本人がその写真を使うことを望むかどうかではないでしょうか。
どうしても写真がないときには、思い切って遺影写真を使わないという選択肢も考えてみましょう。
そもそも葬儀の際に遺影写真を飾るのが一般的になったのは、この国の長い歴史のなかでもごく最近のことで、写真そのものが無い時代から葬儀は行われてきました。
もちろん祭壇には遺影写真があった方がいいのですが、無くても葬儀は行えるのです。
しかし実際のところ、遺影写真を置くかどうかの判断は葬儀担当者の裁量による部分が大きく、ほとんどの担当者は遺影写真を飾るべきだと主張します。
参列者が写真のない祭壇に違和感を覚えることが予想できるからです。
ですが、遺影写真を使わないと決めた場合は必要ないと担当者へ伝え、念のためにお寺に問題ないかの確認も取っておきましょう。
葬儀は故人と喪主、遺族の意向が最優先となりますので要望は必ず伝えてください。
メモリアルコーナーの活用
遺影写真を使わなかった場合、また遺影以外の写真も見てもらいたいときはロビーにメモリアルコーナーを設置できる斎場があります。
残っている写真や思い出の品、過去の表彰状などを飾ることで参列者に喜んでもらうことができるので、葬儀担当者に相談してみてはいかがでしょうか。
エンディングノートに写真について記録しておく
田舎で一人暮らしをしていたり長期的に入院をしていた方が亡くなられると、写真の保管場所がわからないといった問題が起こることがあります。
押し入れの奥底にあるのか、ロックのかかったパソコンのなかに保存してあるのか、故人にしか分からず遺族が苦労するかもしれません。
葬儀が後わってから家の整理をしていて、遺影に使った写真よりもふさわしいものが出てきてしまったら残念です。
そんなことが起こらないように、多くの葬儀屋で終活の一環としてエンディングノートの活用をおすすめしています。
エンディングノートには様々な項目があり、希望する葬儀の規模や予算、生命保険の加入状況や資産の状況など遺族が葬儀の準備を行うために必要な情報を遺すことができます。
そのなかには遺影写真の項目もあり、遺影用の写真は用意してあるのか、写真はどこに保管してあるのか等を書いておくことができます。
葬儀で自分が気に入った写真を使ってもらうためには誰が見てもわかるエンディングノートの活用が最も効果的です。
遺影写真の印象は絶大
- 遺影写真は故人らしさが出ているものを選ぶ
- メモリアルコーナーも積極的に活用する
- 写真が無いなら使わなくてもいい
- 自分の写真はできれば自分で準備する
葬儀場においても、ホールに入室した参列者の目に真っ先に飛び込んでくるのは祭壇とそこに飾られた遺影写真です。
式中も多くの参列者の目線の先には遺影写真があり、その後も自宅の後飾りや仏壇のそばに残り続けることになります。
故人との思い出が少ない人にとってはその写真の顔が強く印象に残るため、慎重に選ばなければなりません。