香典は葬儀で故人に供える〈お金・贈答品〉で、金額は〈親族・友人・同僚〉との関係性などによって様々。
香典返しは、頂いた香典の〈半額・3分の1〉程度の品物を贈る習慣。品物は〈食べ物・消耗品〉の消え物が良いとされ、〈海苔・お茶・タオル〉などが定番。〈当日・49日後〉の即日返しと忌明け返しの2種類あり、地域性や風習で異なる。
〈お礼状・のし紙〉の書き方、〈辞退・高額・メール〉などのマナーにも気をつけたい。
香典の平均相場金額|関係別のデータ
鎌倉新書がとった香典金額のアンケートデータをこちらにまとめますので参考にどうぞ。
香典返しは頂いた香典の金額を基準に決めることが多いですので、喪主側の立場であっても知っておいて損はないでしょう。
親戚のお葬式に参加したときの香典額
自分の親
配偶者の親
自分の祖父母
配偶者の祖父母
自分の兄弟・姉妹
配偶者の兄弟・姉妹
それ以外の親戚
職場関係者の葬式に参加した場合の香典額
上司
上司の家族
同僚
同僚の家族
部下
部下の家族
友人・知人の葬式に参列したときの香典の額
友人・知人
友人・知人の家族
近所の人
会葬者からの香典の合計金額
香典返しの相場金額
香典返しの基礎知識
通夜や葬儀に参列した人からもらう香典に対して遺族がするお返しの品物のことで、その行為自体を香典返しと呼ぶことも。
頂いた香典は故人へとお供えし、忌明け法要が終了してから香典をくださった方々へ品物を送ります。
かつての葬儀といえば、参列者に会葬返礼品をするだけというのが主流でした。
しかし、平成に入ってから関東地方を中心として、返礼品とは別の品物をおくる「香典返し」という習慣が広まり始めています。
選ぶ品物の種類や金額は、もらう香典の金額や地域性などにより異なり、会葬返礼品のことを香典返しと読んだり、香典返しは行わないといったところもあり様々です。
香典返しの相場金額は半返し
香典返しの品物は、頂いた香典の半分から3分の1程度の金額で設定するのが相場です。
香典の金額の相場は3000円と言われているので、香典返しには1500円から1000円の品物が多く選ばれています。
しかし、相場以上に香典を包んで来られる方がいたり、地域性によるところもあるので注意しましょう。
香典返しに選ぶ品物で意味が変わる
香典返しの品物は何を選んでも良いというものではありません。
選ぶ品物で持っている意味が変わり、なかには香典返しにはふさわしくなかったり、タブーと言われていたりするものもあります。
香典返しによく選ばれているもの
香典返しの品物には消え物が良いとされています。
これは、故人の死に対する悲しみを引きずることがないように、また不幸が残り続いてしまわないようにという意味が込められています。
精進料理に使われる食材であるため好んで使われています。
また賞味期限が長いため余らせてしまった際に返品ができるといった理由からこれらを選ぶことも。
お茶を飲みながら故人を偲ぶためにお茶やコーヒーをおくります。
当日返しをする際には海苔やお茶などが持ち帰りやすいので好まれています。
お菓子は生菓子ではなく羊羹やクッキーなど、缶詰や調味料は重くかさばらないものを選ぶ傾向にあります。
長期間の保存ができる消え物として定番といえる品物です。
連名で香典を頂いた際などは小分けできるお菓子をおくる人が多いようです。
消耗品ですが形が残るタオルやハンカチですが、あふれ出る悲しみや涙を拭いとる、という意味を込めて、また故人が白装束に身を包み旅立つことからランクの高いハンカチや白いタオルなどをおくられています。
かつて香典返しにサラシが使われていた時代の名残という説も。
タオルやハンカチと同じく、旅立つ際の白装束になぞらえて砂糖をおくります。
悲しみや不幸を洗い流すとことを意味しています。
葬儀屋や香典返しを取り扱う会社の事情もありますが、いずれも仏教の教えや、もらう人に配慮して長期的な保存ができる品物が一般的となっています。
ほかにも故人が生前好んでいたものを選び、一緒に故人を偲んでいただくという方もいるようです。
香典返しにふさわしくないもの
ギフトとしてのイメージが強く、香典返しの品物にもいいのでは?と思うような物でも、なかにはお葬式の場にはふさわしくないと言われている品物があります。
特に、食器のような形として残るものは悲しみや不幸も残るからと避けられがちです。
しかし、形が残らない消え物とはいえ、肉や魚(四つ足生臭もの)は殺生を連想させるからという理由で選ぶべきではないと言われています。
また、慶事・祝い事に使われている印象が強いかつお節や昆布、お酒などは香典返しにはふさわしくないという考え方があります。
ほかにも香典返しがはじめから決まっているところや、そもそもお返しをしないというところもあり、地域によって大きく差が出ます。
まずは親族や近隣の方などに、その地域の習わしがないか確認しておくのが良いでしょう。
品物が選べないからと、商品券など金額の分かりやすいものを選んでしまうのはマナー違反となります。
相手に余計な気を使わせないためにも気を付けておきましょう。
相手に選んでもらうカタログギフトもおすすめ
どうしても香典返しの品物が選べない、というときにはカタログギフトという選択肢もあります。
香典返しとしてカタログを相手に送り、そこから自由に選んで注文していただくという方法です。
これなら、相手が香典返しに不向きな肉や魚を選んだとしても、失礼やマナー違反にはならず悩むこともありません。
まだメジャーではありませんが徐々に利用する人が増えてきて、今後は更に浸透していくものと思われます。
香典返しを渡す時期とタイミング
香典をくださった方へお返しをするタイミングは主に2種類。
- 葬儀が終わり落ち着いてから送る忌明け返し
- 葬儀に参列した時点で受付で渡す即日返し
地域性や風習により異なるので葬儀に慣れている親族や、同じ菩提寺の檀家などその土地の葬儀に詳しい人に確認しておきましょう。
即日返し
現代の葬儀で増えつつあるのが即日返し。
香典をいただいた時点で、受付で会葬返礼品とは別で香典返しの品物を受け取ってもらいます。
香典と引き換えで渡すので渡しそびれる可能性が少なく、後日改まってお礼をする必要がないことから、関東を中心として全国的に広まっている傾向にあります。
しかし香典を頂く際は、その場で金額を確認することができないため、金額に応じて個別に品物を選ぶことができません。
あらかじめ同じものを大量に用意しておき、全員に同じ品物を香典返しとしてお渡しします。
もしも相場よりも多くいただいた場合は後日足りない金額に相当する品物を送るかお渡しすれば問題ありません。
また、会葬返礼品と香典返しを一緒のものとする地域や頂いた金額に関わらず当日渡したもので済ませ、改めて品物は送らないといった地域もあります。
さらに香典返しは数が多くなるとそれなりの金額になってきますが、これらを後日自宅へ送るのと比較するとまず送料がかからず香典帳の整理をする手間も省けます。
そして相続税の手続きで、当日負担した香典返しの金額は全額葬儀費用として計上できるので控除対象となるといった経済的なメリットも。
忌明け返し
香典返しの本来の方法で、全国的には即日ではなく忌明け後(四十九日)香典返しを渡す忌明け返しが一般的です。
忌明けまでの法要が済んだことの報告を兼ねて、いただいた香典のお返しをします。
即日返しの方が手がかからないという理由で時代とともに減ってきてはいるものの、地域性などの理由から忌明け後に香典返しをする風習が根強く残っています。
一人ひとりの金額に応じて品物を選ぶことができますが、送り先が多すぎるとかなりの負担となってしまい、品物とは別途で送料も掛かり金額も膨らんでしまいがちです。
また、忌明け後に払った費用は相続税の控除対象とはならず、遺族の負担が大きくなってしまうため時代に合っていないという意見を多く耳にします。
忌明け後いつまでに送ればいいの?
忌明け返しは四十九日(神道は五十日)後に香典返しをお渡ししますが、忌明けを迎えたらいつまでに済ませておくべきでしょうか。
忌明けから一か月以内には届くように手配しておきたいところです。
なかには忌明けが済んでいることに気が付いているものの、まだ送ってこないのかと待っている方がいる可能性があります。
特別な事情がなければ早めに済ませておきましょう。
六曜(仏滅や友引)は気にしなくても良い
香典返しを送るタイミングで、六曜を気にされる方もいらっしゃるかもしれません。
本来、六曜というものは仏教の葬儀とは全く関係のないものですので、香典返しに関しても気にする必要はありません。
ただ、受け取り手の信仰や慣習によって印象が決まりますので、どうするかは相手しだいといったところでしょう。
一般論としては「気にする必要やルールはない」です。
香典返しの礼状の例文
香典返しを一緒に渡す礼状を書く際には、以下のポイントをおさえた文章にすれば違和感のないお礼の文章とすることができます。
②香典を頂いたことに対するお礼
③戒名・法名と忌明け法要が済んだことの報告(忌明け返しのみ)
④香典返しを届ける旨
⑤生前の故人への厚志に対するお礼
⑥書中をもって挨拶とするお詫びの言葉
⑦結語
⑧日付
⑨差出人(喪主・遺族)
相手に失礼のないように、これらは文章の中に入れておくことをおすすめします。
句読点は使用しない
逝去は身内に使う言葉ではないので、死去とする
香典返しの熨斗(のし)の書き方
香典返しに使用される熨斗(のし)の水引や表書きは地方や宗教でやや違ってきます。
慶事用と間違えない限りあまりマナー違反だと取られてしまうことはありませんが覚えておいて損はないので確認しておきましょう。
水引
まずは熨斗の選び方から説明していきます。
香典返しの熨斗は通常白黒結びの水引が選ばれていますが、関西から西日本では黄白の水引が使われる地域もあります。
また結び方は蝶結びと結び切りの2種類がありますが、不幸が連鎖しないよう香典返しには結び切りのものを選びましょう。
蓮が描かれているものは仏教、描かれていないものはどの宗教でも使用されています。
表書き
仏教なら水引の上に”志”と書きましょう。
しかし、西日本のとくに関西地方では”満中陰志”と各地域が多くあるので注意しましょう。
これは中陰(忌中のこと)が満たされる(忌明けにあたる日)ということを意味しており、忌明け法要のことも満中陰法要と呼ばれます。
また神道の場合は”偲草”(しのびぐさ)と書きます。
こちらも地域により異なるので確認しておくべきでしょう。
水引の下には遺族の名前が入ります。
喪主の苗字、フルネーム、喪家を〇〇家という書き方で書く場合などがあります。
こちらには特に地域性なども見られず決まりも無いようです。
香典返しで気をつけたいマナー
香典返しを辞退された場合
葬儀の費用の負担を気遣ったり、会社の規則で受け取ることができない場合などに香典返しを辞退される方がいます。
また、弔電とあわせて香典を書留で送ってこられる場合など、香典返しを渡すことができなかった人へのお礼はどのようにするべきでしょうか?
後日改めて香典返しを送ってしまうと、相手に余計に気を使わせてしまう可能性があります。
香典返しを辞退された方には、お礼状を送るかお礼の電話をしましょう。
頂いた香典が相場よりも飛びぬけている場合を除き、香典返しの辞退はありがたく受け入れるのがマナーです。
香典の金額が多かった場合
相場よりも多く頂いた方については個別にお礼をする必要があります。
香典返しを渡したものの相場より多く頂いていた方には、忌明け御礼として品物を改めて送ると良いでしょう。
最近ではカタログで忌明け返しの品物を注文すると、礼状や熨斗をつけて配送してくれるところ増えてきて便利なので、一度見てみてはいかがでしょうか。
特にお世話になった方へのお礼
故人のお勤め先や近隣の方、自治会長、世話役となってくれた方など葬儀を円滑に進めるために手助けをしていただいた方々へは、香典返しとは別でお礼のご挨拶をしましょう。
これらの方々へのお礼は早ければ早い方が良く、近隣住民や世話役など、近しい方へのあいさつは葬儀後2日以内には済ませておきましょう。
諸事情によりどうしても2日以内に挨拶回りが難しい場合は、最低でも一週間以内には行っておくべきです。
故人の勤め先には、葬儀後にすぐに出向いてしまうと迷惑をかけてしまう可能性があります。
まずは数日中にお礼のお電話を入れて、後日改めてお礼に伺う旨を伝えましょう。
お仕事の合間を縫って応対されるので、相手の都合にあわせてお伺いするのがマナーです。
あいさつに伺う際の服装マナー
葬儀後に各方面の方々にあいさつに伺う際にの服装は、落ち着いた服装かダークカラーのスーツを選びましょう。
女性なら黒色の控えめなワンピースでも構いません。
近所の方ならともかく、少し離れたところまでご挨拶に出向く場合にはあらかじめ電話で予定を聞いておいた方が円滑に進み、相手にも迷惑をかけずに済みます。
メールでお礼をしてもいいのか
メールで葬儀後のお礼をするのはどうなのでしょうか。
書面よりメールでやり取りする方が多いというかたも増えてきた現代、そのような人たちの感覚からすれば、お礼のあいさつもメールで問題ないのではと思う方も少なくないようです。
親しい友人や、会社の同僚など近しい人にはお礼の挨拶をメールで代用しても問題ないようですが、お世話になった方たちへはメールではなく、直接挨拶をするかお礼状を出すようにしましょう。
人によってはマナー違反だという考えの方もいらっしゃいます。
お礼をすべき相手が多すぎて、お礼状を書いていたら手が回らないといったときの打開策として使うのが無難です。
もしメールで葬儀後のお礼の挨拶をするなら、お礼状と同じくかしこまった文面で書くようにします。
近しい関係との人とはメールの文面が崩れてしまいがちですが、あくまでもお礼状をメールで代用するだけです。
文章の中に礼儀を重んじましょう。
先日は、公私ともにたいへんご多忙な中 故___の葬儀にご参列賜り誠にありがとうございました。
また、過分なお心遣いをいただきましたこと、重ねてお礼申し上げます。
お蔭様で、滞りなく葬儀が終了し、故人も安らかに旅立っていったことと存じます。
本来であればお伺いしてお礼申し上げるべきところではございますが、取り急ぎメールにて御礼申し上げたくご連絡いたしました。
略儀ながら書中をもちましてお礼申し上げます。
香典以外のお返しと対応
弔電へのお礼と例文
都合が悪く葬儀に参列できない代わりに弔電を頂くことがあります。
主に遠方に住んでいる方から頂くことが多いので、お礼状を送るかお礼の電話を入れておくのがマナーです。
弔電を一緒に香典を頂いている際には、忌明けにてお礼状とは別でお返しの品物を送る必要があります。
故人の冥福を祈り、喪に服す期間が終わる日。仏式では四十九日。
しかし、忌明けまで何もお礼をしなかったら相手は「まだお礼の言葉が来ていない」と思われてしまう可能性があるので前もってお礼状か電話を入れておきましょう。
お蔭様ををもちまして、滞りなく葬儀を終えることができましたので、ここにご挨拶申し上げます。
生前親しくしていただいた○○様のお心遣いとお言葉に、故人も安らかに旅立っていったことと存じます。
故人亡き後も、遺された遺族一同これまでと変わらぬご厚誼を賜りますようひとえにお願い申し上げます。
供花・供物へのお礼と例文
供花や供物のお礼は、弔電と同じくお礼状か電話にて伝えるのが一般的です。
お礼状の書き方は弔電とあまり変わりませんが、文面にて頂いたものを間違えてしまうこと失礼にあたります。
例えば供物を頂いたのに弔電で紹介したような文章を送ってしまうと気を悪くされてしまう方がいるかもしれません。
謹んでお受けし、霊前へと飾らせていただきました。
故人の最期を美しく飾ってくださいましたお心遣いまことに感謝申し上げます。
また、故人が生前賜りました度重なるご厚情に重ねてお礼致します。
略儀ながら書中をもってご挨拶申し上げます。
香典返しの金額相場まとめ
香典返しの送り先が少なければ品物を準備して配送の手配をしても良いですが、送り先の数が多すぎる場合は一苦労です。
ひとりひとり頂いた香典の金額を確認しながら品物を選び、熨斗を貼って自宅まで忌明けに合わせて配達してもらうよう手配をする。
もしも品物の入れ間違いや住所の間違い、一人だけ送り忘れていたなんてことがないか不安になってしまう方もいるのではないでしょうか。
そんなときは香典返しを配送手配まで行ってくれるサービスも検討してみましょう。
おそらく香典返しの品物を選んだお店やカタログギフトは、そのほとんどが熨斗や礼状の作成も代行してくれます。
葬儀がひと段落したら速めに予約をしておいて、送り忘れが無いよう手配しておきましょう。
②先般 亡〇〇の葬儀に際には ご多忙中にもかかわらずご会葬を賜りまたご丁重なるご厚志を賜り まことにありがとうございました
③お陰様をもちまして 〇月〇日に四十九日忌の法要を無事に相営むことができましたのでご報告いたします
④つきましては 心ばかりではありますが品物をお届けいたしましたので お納めいただければ幸いです
⑤故人が生前賜りましたご厚情に感謝申し上げますとともに 残された遺族につきまして今後も変わらぬご指導ご厚誼を賜りますようお願い申し上げます
⑥先ずは略儀ながら書中を持って謹んでご挨拶申し上げます
⑦敬具
⑧平成〇〇年〇月〇日
⑨東京都〇〇区〇〇
喪主 〇〇 〇〇 他親族一同