納骨堂とは一般的には屋内に多くの遺骨を納めておく場所のような印象を持たれることが多いです。
実際のところは多くの遺骨を並べて置くタイプから、従来のお墓のように墓石を建てるものまで、納骨のタイプは様々あります。
納骨堂がどういったものかは明確に定義されていませんが「室内のお墓」という認識でいれば間違いないかと思います。
従来の墓石型のお墓を「一戸建て」とした場合に、納骨堂は「分譲マンション」のようなものと例えられます。
都心部を中心に墓地の土地不足問題を解決できる手段として、納骨堂の数は増加しています。
利用者としては以下のようなメリットがあげられます。
- 手ぶらでお参りできる
- お墓の管理・掃除が楽
- 屋内なので天候に左右されない
- 交通の便がいいのでお墓参りしやすい
- 屋内なので遺骨を清潔に保てる
- 宗教不問
費用面やお墓はいらないという近年の思想から納骨堂を選ぶだけでなく、「普通の墓地よりも通いやすいから」という理由で納骨堂を選ぶ高齢者の方も多いようです。
納骨堂の費用
納骨堂の費用は50万円ほどと言われますが、あくまでも目安です。
一言で納骨堂と言っても、その形は様々です。
納骨方法を合祀とし、納骨スペースや設備を最小限のものにすればもっと費用は安くなります。
逆に、合祀せず個別に納骨し、仏壇やお墓のような設備を設置するのであれば、当然その分の費用はかかるので100万円を越えてくるでしょう。
高級志向な納骨堂では、500万円を超えるものもあります。
ただし、数十万円〜の価格帯が主流となっており、従来型の墓石を建てる埋葬と比較すると低予算で収まる傾向にあります。
納骨堂はその運営母体や納骨方法により価格が変動しますので、次から説明していきます。
納骨堂の運営母体は3種類
納骨堂を運営する経営母体は大きく3種類あります。これは一般のお墓も同じように分類されます。
宗教法人である寺院が管理・維持する
僧侶から供養を受けられるなどのメリットはあるが、その分お寺との付き合いやお布施も必要となり、宗教的な制限もある
都道府県・市区町村などの自治体が管理する
他と比べると費用が割安である
募集の時期や数に制限があるためいつでも申し込めるわけではなく、高倍率の抽選となることが多い
公益法人や宗教法人などが管理・維持する
費用は割高になる傾向
寺院や役所からの制限が少ないので、自由度が高い(例えばデザイン性のあるものにしたいなど)
納骨堂の種類と仕組み
納骨堂の形式は大きく以下のように分類されます。
- 自動搬送式
- 棚/ロッカー式
- 仏壇式
- 自動搬送式
- 屋内墓地式
機械・自動搬送式
1990年代の後半から登場し、現在納骨堂の主流の形になってきているのが自動搬送式です。
都心部のように土地不足問題がある地域で増えています。
首都圏には建設中も含めて、自動搬送式の納骨堂が約30箇所に増えています。全て完売すれば利用者の数は12万〜15万人となる計算です。
自動搬送式システムの動画です。
お墓参りをするときに遺骨を呼び出すタイプです。
共用の墓石の一部分に個別の厨子(ずし/骨壷が入っている箱)が運ばれてきてセットされます。
本物の火を使う香炉の代わりに電子香炉になっており、赤く光って香りもするようにできています。線香も電子線香です。
個別にお墓参りができるのにも関わらず、お墓を建てるわけではないので費用が抑えられます。
また、通常のお墓と異なり電子パネルが採用されているため、故人の写真を何枚も表示できる仕組みとなっていたりします。
墓じまいをした古いお墓の写真も入れて、懐かしむことも可能。
施設によって価格は異なりますが100万円前後〜。
2人以上入れるものや、高級志向な納骨堂、個室などになると価格が高くなり、上は500万円するものもあります。
ちなみに外墓(外にたてる一般的な墓石)の平均購入額が約174万円です。
棚/ロッカー式
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個別の収蔵スペースが並びます。
一つ一つの区画が小さい分、他の形式と比較して費用が抑えられます。
個人用で50万円程〜の相場観です。
納骨堂の主流のタイプで、一般的にイメージされる納骨堂にあたるかもしれません。
仏壇式
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仏壇が並んでいるような景観となります。
仏壇と同じように本尊や仏具を設置します。
屋内型の納骨堂がいいけども、自動搬送式のように機械で動かすのは抵抗があるという人にも選ばれます。
仏壇型の納骨堂を購入することで、家に仏壇を置く必要が無くなったというメリットを感じている方もいらっしゃるようです。
屋内墓地式
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屋内に個別のスペースを契約し、そこにお墓を建てる形式です。
もっとも外墓に近い形で、見た目もお参りもできます。
また、自動搬送式と違って動かさないお墓のため、故人の写真や品を多く納められるなどのメリットもあります。
お墓を建てる分の費用はかかりますので、少なくとも100万円〜の価格帯となるでしょう。
納骨堂によっては、個室となっていて周囲を気にせずお墓参りができる高級型もあります。
200万円〜500万円する納骨堂も案外人気のようです。
納骨堂Q&A
宗派・無宗教の場合
納骨堂は「宗派を問わない」「無宗教でも可」としているところが多いのも利用者としての利点です。
ただ、経営母体が寺院である納骨堂の場合は注意が必要です。
納骨堂の契約は宗教不問だとしても、各種法要において他宗教の僧侶に読経してもらえるかどうかは別になります。
もし、宗教的な制限がかからない方がいいのであれば、民営か公営の納骨堂を選んだ方が無難でしょう。
お布施
僧侶に法要を依頼する場合は、通常のお墓と同じようにお布施やお車代などが必要になるのが通常です。
あくまでも法要を依頼するお坊さんや宗派によって決まるものですので、一概に金額やマナーを断言することは難しいです。
お参りの方法や服装
従来の墓地にあるお墓と違うのは室内であるということです。
- ロウソクに火をつけられるか
- 線香はあげてもいいのか
- 生花は持ち込んでもいいのか
納骨堂によってルールが設けられていますので、初めてお参りに行くときは設備ごとの決まりを確認します。
あとは、屋外と比較して遺骨も人も密集しますので、周囲への配慮は必要になるでしょう。
服装については特に定められていない場合が多いと思います。
周りの人の迷惑にさえならなければ問題ありません。
納骨堂によっては、法要などで喪服を着用している人と、軽装でお参りにきている人とがすれ違わないように、入り口を分けているような施設もあるようです。
お供え物やお花を持参してもよいのか
納骨堂へお参りに行く際、お供え物やお花を持参したい人もいるでしょう。
しかしながら、室内墓である納骨堂では持ち込みが制限されている場合が多いです。
一切のものを持ち込む必要がなく手ぶらでお参りできるところもあれば、一部だけ持ち込みが許可されているところなど、納骨堂によってルールが異なります。
納骨堂がつぶれたらどうなるか
福井県の永宮寺が2005年に自動搬送式の納骨堂「はちす陵苑」5000基を設置しましたが、60基しか売れずに破産した記録があります。
このときは、既に納骨済みの方は「遺骨の引取り」が必要になったようです。
ただ、現状はこれだけ人気になっている納骨堂ですので、お寺が破産して潰れるということはなかなか考えづらいのではないでしょうか。
機械は故障しないのか
自動搬送式の納骨堂を作っているのは主に大手物流システムの会社です。
- ダイフク
- トヨタ自動織機
- IHI
- 村田機械 など
ある意味、建物自体は最新のマンションみたいなものですので、耐震構造もしっかりしていますし、過去10年20年で故障によるトラブルは無いようです。
しかし、将来的にどうなるかは誰にもわからないということが本音だと思います。
エレベーターは故障しないのか?と同じですね。
ほとんど故障することはありませんが、100%故障しないとは言えません。
納骨堂の営業時間は何時まで?
お参りが可能な時間はそれぞれの納骨堂によって決められています。
9時〜18時前後に設定されている納骨堂が多いです。
一部ではありますが、深夜帯や24時間のお参りに対応している納骨堂もあります。
生活スタイルとして早朝や深夜帯にお参りしたい場合は、営業時間を考慮して納骨堂を探した方が懸命です。
動物・ペットの納骨堂
ペット用の納骨堂、ペットと一緒に入れる納骨堂もあります。
ペット需要の増加に合わせて、動物対応のお墓も増えていますので「ペット対応」を条件に探すとたくさんでてきます。
なお、犬や猫以外の動物(小動物や鳥など)に対応しているお墓もあります。
納骨堂をやめる・解約する
一度契約した納骨堂をやめたり、解約することは可能です。
しかし、先に一括で支払った永代供養費は返還されないことが通常です。
これは最初の契約内容に含まれているはずです。
契約したあとで事情が変わって解約することも稀にあるかもしれませんが、費用の返還は難しいという点だけ注意しておきたいです。
納骨堂の引っ越しや移動
別の納骨堂に移動や引っ越しをすることも可能です。
考え方としては通常の墓石などと同じで「改装(遺骨 を動かすこと)」となります。
納骨堂は一時預かりにも利用できる
永代供養墓として人気の納骨堂ではありますが、もちろん永代供養以外の用途としても利用可能です。
一例として、新しく墓石を建てるまでに遺骨を納骨堂に保管しておく「一時預かり」です。
永代供養と契約内容が異なりまりので、必要な期間分の料金を支払って利用することになります。
納骨堂まとめ
新たにお墓を建てずに納骨堂を選ぶ人は非常に増えていますし、墓じまいをして永代供養つき納骨堂に改葬をする人もいます。
時代的な背景を考えても、樹木葬・散骨と並んで主流となっていく納骨方法です。