樹木葬は花や木などの樹木を墓石の代わりに墓標とするものです。
1999年に日本で初めて樹木葬を始めたのは、岩手県一関市の臨済宗・祥雲寺で、現在でいう里山型の樹木葬です。
明確な定義はありませんが、その名称から「自然っぽい」というイメージにより人気が増えています。
「自然に還りたい」という理由でお墓よりも散骨を選ぶ人が増える中で、樹木葬も自然的なイメージから人気が高まっています。
埋葬方法によりますが、カロート(石の囲い)に入れないタイプでは、実際に数年〜10年ほどで土に還ります。
日本だけでなく、ドイツでも国有森林保護の観点から樹木葬のブームが起きているようです。
樹木墓の多くは永代供養墓となりますので、墓じまい後の改葬先の一つとしても選ばれます。
散骨と違って埋葬する場所がありますので、いわゆる「お墓参り」という行為が可能です。
また、同じく永代供養墓としたい場合でも納骨堂のように室内に納骨するより、花や木がある場所を好むのであれば樹木葬を選ぶ理由となるでしょう。
法的に埋葬方法としても問題なく、宗教に縛られない自由度もあります。
永代供養墓としているところがほとんどですので、生前の契約や、継承者がいない状態でも契約できるという利点もあります。
お墓を建てたり、納骨堂を契約するのに比べて、低価格で埋葬できるのも人気の理由です。
樹木葬といっても形態は様々ですので、どんなタイプがあるのか、どれくらい費用がかかるのかなどをここでまとめます。
樹木葬の費用相場は50万円前後
樹木葬は埋葬するタイプによって値段に幅がありますが、平均的には50万円前後になると言われます。
1人目の契約は50万円
2人目からは1人10万円
年会費8000円(生前のみ)
樹木葬でも埋葬方法で費用が変わる
大きなシンボルツリーの下に複数の遺骨を埋葬する合祀では値段が抑えられ、安いところでは10万円台〜でもあります。
個別の樹木を植えるタイプであれば場所を独占する分の費用がかかり、50〜100万円程度するものもあります。
地域によって地価が変わることも樹木葬の費用に影響がありますので、地価が高い地域ほど費用が高くなります。
通常の墓石を建てる費用と比べると値段は安く抑えられる傾向にあります。
あとは、予算と「どんなタイプの樹木葬がいいか」との兼ね合いで決めていきます。
樹木葬にかかる費用の内訳
- 永代供養料
- 埋葬料
- 彫刻代
- (年会費)
それぞれどんなものを希望とするかで値段が変動します。
年会費(管理料)の有無
契約内容や墓地・霊園によっても異なりますが、年会費がかかる場合は5000円〜1万円/年ほどが一般的です。
また永代供養での契約の場合は、一括ですべての料金を支払うので管理費などはかからないのが通常です。
永代供養の契約であっても、生前契約の場合は実際に埋葬するまで(生前の間だけ)は管理費がかかってくることもあります。
分割払い・ローンは可能か
基本的にはお墓の契約・購入は一括払いとなりますが、まとまったお金を用意できない場合は分割払いやローンを検討します。
樹木葬の運営会社が分割払いに対応している場合は可能ですので、契約前に確認しておくべきです。
もし直接分割払いに対応していない場合は、銀行や別のローン会社、建墓ローンなどを経由して分割で支払う方法を選択します。
ただし、ローンに審査に通ることが条件となります。
樹木葬の種類とタイプ
分かりづらいので、タイプをざっくり分類してみました。
里山型と公園型(都市型)
樹木葬は大きく里山型と公園型とに分かれ、公園型の方が主流で全体の8割ほどと言われています。
里山型
里山型は樹木葬の中でも最も自然に近い形のもの。
名前から予想できるように里山(山林)の中に埋葬するものです。
山の中で決められた区域を購入して埋葬し、1つの遺骨に対して一本ずつ木を植えるのが通常です。
里山型は最も自然的ではありますが、山深い場所への埋葬のため交通の便を考えると参拝するのが大変というデメリットもあります。
公園型(都市型)
主流となっている公園型の樹木葬は、特に土地不足が深刻な都心部で人気となっており、区分けや埋骨方法で更に細かく分かれます。
庭園型(ガーデニング型)
シンボルツリーや花木を植えて、ガーデニング風にする。
その区画の下に納骨。
1本ずつ植えるタイプとシンボルツリータイプ
墓標とする木のタイプは大きく2パターン。
- 1つの遺骨に対して1本の木を植えるタイプ
- 1本の大きな木に対して複数埋骨するシンボルツリータイプ
1本ずつ植えるタイプ
納骨する遺骨ごとに、1本ずつ木を植えるタイプです。
遺骨ごとに場所が区切られているため、通常のお墓の墓標を、そのまま墓石から樹木に変更したような感覚で考えられます。
シンボルツリータイプ
シンボルとなる大きなツリーの周囲に複数の遺骨を埋葬するタイプです。
自分や家族の遺骨だけでなく、他人の遺骨も同じ区域に埋葬されます。
遺骨をどのように区分けて埋骨するかで、またタイプが変わります。
埋骨方法の違い
シンボルツリーの周りに遺骨を埋めるのですが、複数の遺骨を区分けるかどうかという埋骨方法が変わります。
合祀(合同)タイプ
家系など関係なく、全部同じ場所にまとめて埋骨するものです。
区画を専有しないため、一箇所に多くの遺骨を埋骨できるのがメリット。
その分費用が抑えられる傾向にあります。
ただ、納骨した骨が全部混ざってしまうことになるので、個別に遺骨を取り出すことはできなくなります。
もし将来的に場所を移動させる可能性があるのであれば不向きな方法と言えます。
区画分けタイプ
遺骨を区分けて埋骨する方法です。
個人用だけでなく、夫婦用、家族用などの区分け方を選べます。
樹木葬の特徴やメリット
バラや桜など好みの樹木を選ぶことができる
樹木葬では墓標とする樹木を選ぶことができます。
特にバラや桜の木の人気が高いです。
好きな花があるのであれば、希望する花に対応した霊園を探すと良いでしょう。
景色がいい場所を選べる
樹木葬では墓標だけでなく、埋葬される土地の景観でも選ばれます。
せっかく自然豊かな環境で眠るのですから、見晴らしがいい場所であればなお素晴らしいです。
海が見える霊園などの条件で探す方も多いです。
ペットと一緒に入れる
樹木葬でも霊園や区画によってペットに対応しているかどうかが変わります。
ペットと一緒にお墓に入りたいという需要に合わせて、ペット対応の霊園も多くありますので、希望の地域にあるかどうか探してみると良いでしょう。
女性専用の樹木葬
独り身であったり、様々な心情などから「家の墓に入れない・入りたくない」という方も少なくないようです。
そういった方々は自分用にお墓を購入することがあり、女性専用のお墓も好まれています。
家に縛られることなく、自分ひとりでお墓に入ったり、友達同士で同じお墓に入るという選択をする方もいます。
樹木葬を選ぶ場合の注意点
散骨ではなく埋葬なので墓埋法が適用される
樹木葬は墓標が、墓石ではなく樹木になったものです。
そのため、散骨とは異なり、通常のお墓のように埋骨となり、墓地埋葬法が適用されます。
そのため、墓埋法で定められた場所に埋骨する必要があります。
つまり、「自分の庭に木を植えて埋骨したい」ということはできません。
墓石と違って景観が変化する
木や花の景観が美しいのも樹木葬のメリットではありますが、当然植物ですのでその景観は変化します。
木は成長して変化しますし、冬になれば葉が落ちます。
一年中美しい景観を保っているわけではありませんし、5年後10年後はどのような姿になっているかは想像できません。
墓石のように常に同じ見た目というわけにはいかないことは理解しておきたいです。
自分好みにガーデニングや手入れはできない
木や花は手入れが必要なものですが、墓標はその霊園の管理下にありますので、個人で好きなように手入れしたりガーデニングをすることは難しいです。
個別に1本ずつ木を植えるタイプであれば、その木だけは多少手入れが可能かもしれません。
それでも、周囲にある他の人の墓標が手入れが行き届いているかはわかりませんので、全体期に自分好みの景観を作り上げることは難しいでしょう。
まだ樹木葬に理解が無い人もいる
散骨や樹木葬は、始まってからまだ20年程度です。
そのため、まだまだお墓と言えば墓石というイメージの人も多いですので、親族などの理解を得る必要はあります。
また、樹木葬がまだ無い地域もありますので、墓石と比べると選べる場所は制限されます。
樹木葬のQ&A
樹木葬での仏壇・仏具・位牌の扱い
樹木葬を選択した場合でも仏壇や位牌の扱いは特に決まりはありません。
もし位牌を残したい場合は、自宅の仏壇や寺院での管理します。
位牌を残す必要がないのであれば、寺院でお焚き上げ・魂抜きをしてもらって処分することになりまうす。
樹木葬で土葬はできるか
樹木葬でも土葬は可能です。
現在、日本国内ではほとんどが火葬での埋葬となっていますが、土葬自体が禁止されているわけではありません。
しかし、土葬は一部許可された地域・霊園でしか行うことができません。
もし土葬をしたい場合は、土葬が可能な霊園を探す必要があります。
樹木葬でのお参り・お供え物
樹木葬でのお参りでは、通常の墓石型の墓地とルールが異なります。
里山型の場合は火事防止のために線香やろうそくなどの火気が禁止されています。
また、花を活ける花瓶が置けないため、そのまま土に刺したり置いたりする形となります。
霊園によってルールが異なる場合も十分考えられますので、契約時に確認したいです。
戒名
樹木葬では戒名は必須ではありません。
しかし、寺院が管理している樹木葬霊園であれば、檀家になったり戒名をつけてもらうことも可能です。
樹木葬のツアー
樹木葬の霊園を見てまわるツアーがあります。
終活の一環として霊園を見て回る人も多いです。
将来的に樹木葬を検討している人は、様々なツアーに参加して霊園の雰囲気や景観を確認してみるのも良いかもしれません。
樹木葬まとめ
樹木葬は年々需要が高まってる埋葬方法です。
永代供養墓のため生前から予約して場所を確保しておく人も多いです。
場所とタイミングによっては倍率が高くなっており、申し込みたくても申し込めないケースもあるようです。
興味があれば、資料請求や問い合わせにより早めに準備をしておく方が良さそうです。
・土中に直接納骨するか、袋に入れて納骨するか
・骨壷で納め、一定期間のうちに合祀に合葬するか
・プレート・墓標の有無 など