葬式やお通夜に参列する際、腕時計のマナーについての疑問を持つ方は少なくありません。「時計をしていくべきか」「どんな時計が適切か」といった悩みは当然のものです。
葬儀では基本的に、装飾品として目立たないフォーマルな腕時計を身に着けることがマナーとされています。時間を確認する機能としての役割を重視し、派手さや装飾性を抑えた時計選びが重要です。
もし、葬儀やお通夜にふさわしい時計を用意できない場合は、腕時計をせずに参列することも無難な選択肢となります。
この記事では、葬式・お通夜に適した時計の基本知識とマナーについて詳しく解説します。文字盤の色やベルトの素材、NGとされるデザインなど、知っておくべきポイントを網羅的に紹介しますので、参列の際の参考にしてください。
葬儀・お通夜に適した腕時計の基本マナー
葬儀やお通夜に参列する際の腕時計選びには、いくつかの基本的なマナーがあります。時計を身につけるべきか、どのような時計が適切か、ここで正しい知識を身につけましょう。
腕時計を身につけることは問題ない理由
葬式やお通夜に腕時計を着用すること自体はマナー違反ではありません。むしろ、葬儀の進行中に時間を確認する必要が生じる場面も多いため、実用的な観点からは腕時計の着用が認められています。
実際に、葬儀社のスタッフも業務上の時間管理のために腕時計を身につけて対応しています。重要なのは、腕時計を「時間を確認するための機能的なアイテム」として捉えることです。
ただし、許容されるのは**「時計という機能」としての腕時計**であって、装飾品や個性を表現するためのアクセサリーとしての側面は控えるべきです。葬儀という場で重要なのは、故人を偲び、遺族に寄り添う気持ちであり、装飾品としての時計の主張は場にそぐわないとされています。
葬式では装飾品・アクセサリーはNG
葬儀で着用する服装は、基本的に喪服やブラックフォーマルです。この装いに合わせ、装飾的なアクセサリー類は身につけないのが日本の慣習となっています。

腕時計もこの原則に従い、派手なデザインや装飾的な要素が強いものは避け、シンプルでフォーマルな時計を選ぶことが望ましいとされています。つまり、「装飾品・アクセサリー」としての側面が強い腕時計は葬儀の場では不適切と考えられます。
装飾品としての要素が強い時計の特徴:
- 派手な色使いや装飾が施されている
- サイズが大きく目立つデザイン
- 光沢やきらびやかな素材が使われている
このような特徴を持つ時計は、葬儀や通夜の場では避けるべきでしょう。
礼装・正装にふさわしい時計の条件
葬儀という厳粛な儀式にふさわしい時計を選ぶ際には、「機能性」と「フォーマル性」のバランスが重要です。時計は単なる装飾ではなく機能的なアイテムですが、同時に礼装に合わせた品格も求められます。
葬儀にふさわしい時計の条件として、以下のポイントを意識しましょう:
- 品位を保った外観であること(明らかな安物や古びた印象のものは避ける)
- シンプルなデザインで装飾性が抑えられていること
- 故人や遺族への敬意を損なわないものであること
また、時計が「礼装に合うか」という判断には個人差がありますが、基本的には控えめでフォーマルな場にふさわしいデザインであれば問題ありません。デザインが過度に主張せず、時間確認という本来の機能に焦点を当てた時計を選ぶことが理想的です。
もし適切な時計を用意できない場合は、時計を外して参列するという選択肢も十分に配慮ある行動として受け入れられるでしょう。
フォーマルな腕時計の選び方
葬儀や通夜に参列する際、適切な腕時計の選択は服装の一部として重要です。ここでは、フォーマルシーンにふさわしい時計の特徴と選び方について詳しく解説します。
フォーマルなドレスウォッチの特徴と例
フォーマルなドレスウォッチは、その名の通り正式な場に適した腕時計です。葬儀・お通夜に適したドレスウォッチの特徴は明確です。
理想的なフォーマルウォッチの特徴:
- ケース: ラウンド型(丸型)・薄型のシンプルなデザイン
- 文字盤: 白色でシンプル、カレンダーなどの機能を排した控えめなもの
- 時計の針: 2針(時針・分針)のみの洗練されたデザイン
- ベルト: 黒の革ベルト(シンプルなバックル付き)
このようなクラシックでエレガントなデザインの時計は、どのような冠婚葬祭の場面でも不快感を与えることなく、マナーを守った印象を与えることができます。
グランドセイコー、シチズン、セイコーなどの日本メーカーや、スイス製の高級時計ブランドには、このような特徴を持つドレスウォッチが多く存在します。これらは葬祭だけでなく、結婚式や入学式、就職面接など様々なフォーマルな場面で活用できる一生もの投資となります。
葬儀に適した時計の許容範囲
葬儀は急に訪れることも多く、理想的なドレスウォッチを持っていない場合もあるでしょう。そのような場合に、最低限マナー違反とならない時計の条件について説明します。
葬儀で許容される時計の範囲:
- ケース: ラウンド型(丸型)、スクウェア(正方形)、レクタンギュラー(長方形)の落ち着いたデザイン
- 文字盤: 白色または黒色の控えめなもの
- 時計の針: 2針または3針(秒針付き)
- ベルト: 黒の革ベルトまたはシルバーのメタルブレスレット
このような範囲内であれば、葬儀の場でも大きなマナー違反として注目されることはないでしょう。ただし、革製品が好ましくないという仏教的な考え方もありますが、現代では革靴や革のカバンも一般的に使用されていることから、革ベルトの時計も実用的には許容されています。
特に突然の葬儀参列など緊急時には、これらの条件を満たす一般的なビジネスウォッチでも対応可能です。ただし、明らかに派手な色や装飾がある時計は避けるべきでしょう。
おすすめのフォーマル腕時計
葬儀だけでなく様々なフォーマルシーンに対応できる、コスト対効果の高いドレスウォッチをいくつか紹介します。
2025年現在、フォーマルシーンに適した時計の選択肢:
- 日本製高級時計: グランドセイコー、セイコープレサージュシリーズなど(シンプルで信頼性が高い)
- スイス製クラシック時計: ティソ、ハミルトン、フレデリック・コンスタントなど(伝統的なデザインで中価格帯)
- ミッドレンジブランド: シチズンエコドライブ、カシオリニエージなど(手頃な価格で高品質)

これらのブランドは、2~15万円程度の価格帯で、フォーマルなシーンに十分対応できる高品質な時計を提供しています。長期的な視点で見れば、一本の良質なドレスウォッチを所有することで、様々な冠婚葬祭に対応でき、その都度の悩みを解消することができます。
冠婚葬祭用の時計を新たに購入する場合は、できるだけシンプルで主張しないデザイン、薄型ケース、白または黒の文字盤、そして黒の革ベルトという組み合わせを意識すると、長く使える一本となるでしょう。
マナー違反になる可能性のある時計の特徴
葬儀やお通夜では、時計がマナー違反と判断される可能性のある特徴があります。葬儀という厳粛な場にふさわしくない時計を見分けるポイントを詳しく解説します。
文字盤の色・黒色は許容されるか
文字盤の色は葬儀での時計選びの重要な要素です。
フォーマルシーンにて文字盤は白色が理想的とされていますが、黒色でも許容範囲内と考えられています。特に葬儀の場では黒の喪服に合わせて黒の文字盤も違和感なく使用できます。
ただし、以下の点には注意が必要です:
- カラフルな文字盤は避ける
- 派手な柄や模様が入った文字盤はNG
- 金色や銀色の文字盤は装飾的で目立ちすぎる
基本的に、控えめで目立たない色であれば、マナー違反になることはありません。
ベルトの色・素材の選び方
時計のベルト選びも葬儀のマナーに大きく関わります。
フォーマルな場に適したベルトは主に以下の2種類です:
- 黒の革ベルト:最もフォーマルで葬儀に適している
- シルバーの金属ベルト:一般的に許容される
革ベルトについて、仏教の観点では殺生に関わる革製品は避けるという考え方もありますが、現実的には革靴やカバンも同様であり、厳密に守る必要はないとされています。
避けるべきベルトの特徴:
- 明るい色(茶色、赤、青など)のベルト
- ゴールドやカラー加工された金属ベルト
- 布製やラバー製のカジュアルなベルト
- 装飾的なデザインが施されたベルト
ゴールドケースや装飾は避けるべき理由
葬儀ではゴールドケースや派手な装飾が施された時計は避けるべきです。
その理由は以下の通りです:
- 華美で派手な印象を与え、葬儀の厳粛な雰囲気に不釣り合い
- 喪服との色の不調和が生じる
- 参列者に不快感を与える可能性がある
- 故人や遺族を敬う気持ちが薄れるように見える
2025年現在でも、葬儀ではシンプルで控えめなデザインの時計が望ましいとされています。特に光り物や装飾品は控える傾向にあり、ゴールドは特に目立つため不適切です。
時計の針・クロノグラフの適切さ
時計の針の数や機能も葬儀のマナーに関わります。
フォーマルな場に適した時計の針は:
- 時針と分針の2針
- 秒針を加えた3針までが一般的
これに対し、**クロノグラフ(ストップウォッチ機能)**付きの時計は以下の理由から葬儀には適していません:
- 見た目が機能的で派手になりがち
- スポーツやカジュアルシーン向けの印象が強い
- 文字盤上に複数のサブダイヤル(小さな円形の計)があり、装飾的
同様に、日付表示や曜日表示などの追加機能も、シンプルさを損なうためフォーマル度が下がります。葬儀では必要最低限の機能だけを持つ時計が適切です。
Gショックなどカジュアル時計が不適切な理由
Gショックやプロトレックなどのカジュアルスポーツウォッチは、葬儀には不適切です。

カジュアルな時計が葬儀に不向きな理由:
- デザインが大きく目立つため、厳粛な場にふさわしくない
- カラフルなデザインが多く、喪服との調和が取れない
- 多機能で装飾的な要素が強い
- スポーツやアウトドアのイメージが強く、フォーマルな葬儀の場にそぐわない
- 礼服やスーツに合わせることを想定していないデザイン
葬儀参列の際には、スマートウォッチも含め、カジュアルな印象の強い時計は避け、できるだけフォーマルな時計を選ぶか、時計を外して参列することをお勧めします。
女性の葬儀・お通夜での腕時計マナー
女性も男性同様、葬儀やお通夜に参列する際は時計のマナーに気を配る必要があります。女性用時計特有の注意点と適切な選び方について解説します。
女性用時計の適切な選び方
女性の時計選びの基準も基本的には男性と同様で、派手ではないフォーマルな時計が適切です。葬儀・お通夜にふさわしい女性用時計の特徴は以下の通りです。
女性用フォーマル時計の条件:
- シンプルなデザインで主張が強くないもの
- 文字盤は白または黒の落ち着いた色合い
- ケースサイズは小〜中程度のもの
- ベルトは黒の革製または控えめなシルバーのメタルバンド
特に女性用時計は装飾性が高いものが多いため、普段使いの時計が葬儀に適していない場合も多くあります。葬儀用として別に用意するか、不安な場合は外して参列することも検討しましょう。
避けるべき女性用時計のデザイン
女性用時計に多い以下のようなデザイン要素は、葬儀・お通夜では避けるべきです。
避けるべき女性用時計の特徴:
- キラキラした装飾やラインストーンが施されたもの
- カラフルな文字盤や派手な色使いのもの
- ゴールドカラーのケースやベルト
- 大きくて目立つデザインのもの
- カジュアルブランドのファッション時計
女性用時計は近年、ファッションアイテムとしての位置づけが強くなっており、華やかなデザインが増えています。そのため、葬儀や法事など厳粛な場に適した時計を選ぶ際は特に注意が必要です。
アクセサリー的な腕時計の扱い方
女性用時計の中には、腕時計というよりブレスレットに近いデザインのものも多く存在します。これらは明らかにアクセサリーとしての側面が強いため、葬儀・お通夜では基本的に避けるべきです。
アクセサリー的な時計の例:
- チャーム付きの腕時計
- ブレスレットと一体化したデザインの時計
- バングルタイプの腕時計
- 複数連のチェーンやストラップがついたもの
このようなアクセサリー的な腕時計は、時計としての機能より装飾性が強調されたデザインであり、葬儀の場にはふさわしくありません。参列前に必ず確認し、もし該当する場合は時計を外して参列するのが無難です。
葬儀の場では、華美な装いよりも故人への敬意を表すことが大切です。時計も含めて全体的に控えめな装いを心がけましょう。
お通夜での腕時計マナーの詳細
お通夜と葬儀での時計マナーの違い
お通夜と葬儀(告別式)では、基本的な腕時計のマナーに大きな違いはありません。どちらも故人を弔う厳粛な場であるため、装飾品としての派手な時計は避けるべきです。
しかし、実際の慣習では、お通夜は葬儀と比べて若干形式ばらない雰囲気であることが多いため、時計に関する許容範囲がわずかに広いと考える方もいます。とはいえ、マナーの基本は同じで、フォーマルで控えめな時計を選ぶことが望ましいです。
お通夜は夜間に行われることが多く、薄暗い場所での時間確認が必要になる場合があります。そのため、視認性の良い時計を選ぶことも実用面では重要かもしれません。ただし、光る文字盤など派手すぎるものは避けましょう。
急な参列の場合の対応方法
お通夜は訃報を受けてすぐに参列することも多く、適切な時計を用意する時間がないケースがよくあります。そのような急な参列の場合、以下の対応方法が考えられます:
急な参列時の対応策:
- 普段使いの時計が控えめなデザインであれば、そのまま使用する
- 派手な時計しかない場合は、時計を外して参列する
- 時計を外した場合は、ポケットやカバンにしまって携帯する
- 会場の時計や携帯電話で時間を確認する(ただし、携帯電話の確認は控えめに)
特に急な参列の場合は、時計のマナーよりも故人を偲ぶ気持ちが大切です。適切な時計がなければ、外して参列することを躊躇わないでください。
お通夜に適した時計の選び方
お通夜に適した時計は、基本的に葬儀に適した時計と同じ条件を満たすものです。具体的には、装飾性よりも機能性を重視した、控えめでフォーマルなデザインの時計が適しています。
お通夜に適した時計の特徴:
- シンプルな文字盤(白または黒で装飾が少ないもの)
- 控えめなサイズのケース(特に大きすぎないもの)
- 黒の革ベルトまたはシンプルなメタルベルト(ゴールドは避ける)
- 必要最低限の機能(複雑な機能や派手な表示は避ける)
お通夜は夕方から夜にかけて行われることが多いため、黒の文字盤の時計も白と同様に適していると言えます。光の少ない環境でも時間確認ができる程度の視認性は実用的です。
また、お通夜では、仏式の場合「革製品は殺生につながる」という考え方もありますが、現代では革ベルトの時計も一般的に許容されています。ただし、メタルベルトの時計も適切な選択肢です。
結局のところ、お通夜での時計選びも葬儀と同様に、故人や遺族に対する敬意を表すという本質を忘れず、控えめで品のある時計を選ぶことが大切です。
腕時計がない場合の対応
葬儀やお通夜に適した腕時計を持っていない場合でも、心配する必要はありません。以下では、時計がない場合の適切な対応方法を解説します。
時計を外して参列する場合のマナー
葬儀に参列する際に適切なフォーマル時計を持っていない場合は、むしろ時計を外して参列するほうが無難です。特に以下のような状況では、時計を外すことをおすすめします:
- 派手なデザインやカラフルな色の時計しか持っていない場合
- スポーツウォッチやスマートウォッチが目立つデザインである場合
- 時計が汚れているまたは傷ついている場合
時計を外す際は、参列前に外してカバンやポケットにしまっておくとよいでしょう。この行為自体はマナー違反ではなく、むしろ配慮ある行動として理解されます。
時間確認の代替方法
時計を外して参列する場合、時間確認が必要な場面も出てくるかもしれません。その際の代替方法としては:
- 式場に設置されている時計を確認する
- 必要な場合のみ、携帯電話で時間を確認する(ただし、葬儀中の頻繁な確認は避け、マナーに配慮して行う)
- 受付や会場スタッフに時間を尋ねる
携帯電話で時間を確認する場合は、静かに素早く確認し、長時間操作しないよう注意しましょう。また、必ずマナーモードに設定しておくことも重要です。
フォーマルな時計を持っていない場合の対処法
将来的に葬儀や冠婚葬祭に備えて、フォーマルな時計を準備することも検討してみましょう。準備するまでの間の対処法としては:
- 親族や友人から一時的に借りる
- 葬儀当日は時計を外して参列し、後日フォーマル時計を購入する
- レンタルサービスを利用する(高級時計のレンタルサービスも増えています)
特に、今後も冠婚葬祭の機会が多い方は、シンプルなデザインのフォーマル時計を一つ持っておくことをおすすめします。価格帯は1〜3万円程度のものでも、デザインが適切であれば十分です。
フォーマル時計を選ぶ際の基本条件:
- シンプルな文字盤(白または黒)
- 装飾が少ないデザイン
- 黒の革ベルトまたは控えめなシルバーメタルバンド
このような時計は、葬儀だけでなく、結婚式やビジネスシーンなど様々なフォーマルな場面で活用できるため、一つ持っておくと便利です。
葬式・お通夜の腕時計まとめ
葬式やお通夜での腕時計のマナーについて、重要なポイントをまとめました。
フォーマルな時計を用意できる場合は、葬儀の場にふさわしい控えめなデザインの時計を身につけましょう。理想的な時計の条件は、シンプルな文字盤(白または黒)、装飾が少ないデザイン、黒の革ベルトまたは控えめなシルバーメタルバンドです。
適切な時計を用意できない場合は、時計を外して参列することがマナーとして推奨されます。無理に不適切な時計を身につけるよりも、外しておくほうが無難です。
最終的には、故人や遺族に対する敬意を表するという葬儀の本質を理解し、パッと見で不快感を与えない時計であるかどうか、品を欠いていないかが重要な判断基準となります。
今後の冠婚葬祭やフォーマルな場に備えて、一つ適切なドレスウォッチを持っておくことも、大人としての心構えと言えるでしょう。何より大切なのは、故人を偲び、遺族を支える気持ちです。