神道の葬儀「神葬祭(しんそうさい)」について、「仏教式の葬儀と比べて費用は安いの?」と疑問に思っていませんか? 戒名料がないことは知られていますが、実際にいくらかかるのか、費用相場や詳しい内訳は分かりにくいものです。
この記事では、神道(神式)の葬儀費用について、2025年最新の情報を基に以下の点を網羅的に解説します。
神道葬儀(神葬祭)でわかること:
- 具体的な費用相場と詳しい内訳
- 仏式葬儀との費用の違い
- 葬儀費用を抑えるためのポイント
- 参列する際の「玉串料」のマナーや相場
- 神葬祭の流れや注意点
神葬祭を検討されている方、葬儀費用について正確な情報を知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
神道葬儀(神葬祭)の費用相場は約80万~140万円+神職への謝礼
まず結論として、神道葬儀全体の費用相場と、よくある誤解について解説します。
神葬祭全体の費用目安
神道の葬儀である神葬祭(しんそうさい)にかかる費用は、葬儀の規模や内容、地域によって大きく異なりますが、一般的な相場として、葬儀社に支払う基本的な費用(祭壇、棺、遺体搬送・安置、運営人件費など)と、飲食や返礼品などのおもてなし費用を合わせて約80万円~140万円程度が一つの目安となります。
ただし、非常に重要な点として、この金額には神職(神主)への謝礼(祭祀料など)が含まれていないケースがほとんどです。神職への謝礼は別途準備する必要があります。
神葬祭は仏式の葬儀に比べて件数が少ないため、明確な統計データが出にくい側面もあります。あくまで目安として捉え、具体的な費用は個別の見積もりで確認することが大切です。
「神式=安い」は誤解?戒名料はないが他の費用がかかる理由
「神道の葬儀は、仏式に比べて費用が安い」と耳にすることがあります。その理由として、仏式の葬儀で大きな費用負担となることがある「戒名料」が、神道には存在しないことがよく挙げられます。
確かに戒名料はかかりませんが、だからといって神葬祭の費用が必ずしも安くなるとは限りません。なぜなら、神道には神道特有の費用が必要となるからです。
例えば、神職への謝礼として祭祀料(さいしりょう)や玉串料(たまぐしりょう)が必要です。これは仏式のお布施に相当するものですが、金額は依頼する神社の考え方や神職の人数などによって変動します。また、神様へのお供え物である神饌物(しんせんもの)や、儀式で用いる玉串(たまぐし)の準備、場合によっては雅楽の演奏費用などもかかります。さらに、神社には墓地がないことが多いため、新たに墓地(霊園など)を探す必要があるケースも考えられます。
このように、戒名料がない代わりに別の費用が発生するため、一概に「神式=安い」とは言えないのです。葬儀全体の費用は、結局のところ一つ一つの葬儀の内容や規模によって決まります。費用だけで安易に判断せず、それぞれの形式の内容をよく理解し、比較検討することが重要です。
神道葬儀(神葬祭)の具体的な費用内訳
神道葬儀(神葬祭)には、大きく分けて「神職への謝礼」「葬儀社へ支払う費用」「その他にかかる費用」があります。どのような費用がかかるのか、主な内訳と目安を見ていきましょう。
神職(神主)への謝礼:祭祀料・玉串料など
神葬祭の斎主(儀式を取り仕切る神職)や祭員(補佐役の神職)に支払う謝礼です。仏式の「お布施」にあたるものと考えられます。
祭祀料(さいしりょう)とは?:葬儀の祈祷に対するお礼
祭祀料は、通夜祭や葬場祭などの儀式を執り行い、故人の御霊を祀るための祈祷をしていただいたことに対する謝礼です。神葬祭における神職への謝礼の主な部分を占めます。
祭祀料の金額相場:神職の人数で変動
祭祀料の金額は、地域や神社の考え方、葬儀の規模によって異なりますが、神職(斎主)1名にお願いする場合で15万円~35万円程度、斎主と祭員の計2名にお願いする場合は30万円~50万円程度が一般的な目安とされています。依頼する神社の規定を確認するか、葬儀社に相談するのが確実です。
御車代・御膳料も必要?
祭祀料とは別に、神職に会場までお越しいただくための交通費として「御車代」、葬儀後の宴席(直会)に神職が参加されない場合に食事代として「御膳料」を包むことがあります。目安はそれぞれ5千円~1万円程度です。これらが必要かどうか、金額も含めて事前に確認しておくとよいでしょう。
遺族から神職へ渡す「玉串料」について
元記事で触れられているように、仏式の戒名料がない代わりに「玉串料」がかかると説明されることがあります。これは神職への謝礼(祭祀料)を指している場合もありますが、一般的に「玉串料」という言葉は、参列者が遺族に渡すお金(仏式の香典にあたるもの)を指すことが多いです。混乱を避けるため、神職への謝礼は「祭祀料」として区別すると分かりやすいでしょう。
葬儀社へ支払う費用:葬儀プラン・基本料金
葬儀社に神葬祭の施行を依頼した場合、プラン料金や基本料金として以下の費用が含まれていることが一般的です。
祭壇(神式祭壇)
神葬祭では、「神籬(ひもろぎ)」や「白木祭壇」と呼ばれる神式特有の祭壇を使用します。仏式のような華美な装飾は少なく、白木を用いたシンプルなものが基本ですが、大きさやグレードによって費用は変動します。
棺・骨壷
故人を納める棺や、遺骨を納める骨壷の費用です。神式特有のデザインがあるわけではありませんが、葬儀プランに含まれる基本的な費用項目です。
遺体搬送・安置
ご逝去された場所(病院など)からご自宅や斎場へ故人を搬送するための費用や、斎場などで一時的にご遺体を安置するための費用です。
運営スタッフ人件費
葬儀の設営、儀式の進行補助、参列者の案内などを行う葬儀社のスタッフの人件費です。
その他にかかる費用
神職への謝礼や葬儀社の基本料金以外にも、以下のような費用が発生します。
会場使用料(斎場・自宅)
葬儀を行う場所の費用です。公営斎場を利用すれば費用を抑えられますが、予約が取りにくい場合もあります。民営斎場は費用が高めになる傾向がありますが、設備が充実していることが多いです。自宅で行う場合は会場費はかかりませんが、準備やスペースの確保が必要です。斎場を利用する場合の費用目安は10万円~20万円程度です。
神饌物(しんせんもの)・玉串(たまぐし)費用
神饌物とは、神様へのお供え物のことで、お米、お酒、海の幸、山の幸、野菜、果物、塩、水などを用意します。費用目安は2.5万円~4.5万円程度です。玉串は、榊(さかき)の枝に紙垂(しで)を付けたもので、参列者が神前に捧げて拝礼(玉串奉奠)するために使います。1本あたり100円~200円程度が目安で、参列者の人数分用意します。
雅楽演奏費用(生演奏・CDなど)
神葬祭では雅楽が演奏されることがあります。生演奏を依頼する場合は別途費用が発生します。近年ではCD音源などで代用し、費用を抑えるケースもあります。生演奏を希望する場合は、葬儀社に費用を確認しましょう。
飲食接待費用(通夜振る舞い・直会)
通夜祭の後に「通夜振る舞い」として簡単な食事を用意したり、葬場祭や火葬祭の後に「直会(なおらい)」と呼ばれる宴席を設けたりする場合、その飲食費用がかかります。直会の場合、1人あたり5千円程度が料理の目安です。
返礼品費用
参列者へのお礼として渡す品物の費用です。会葬御礼として当日渡す品物(500円~1千円程度)と、後日、頂いた玉串料(香典)に対してお返しする品物(頂いた額の半額~1/3程度、または3千円~5千円程度の品物)があります。
火葬費用
故人を火葬するための費用で、火葬場の使用料として支払います。公営の火葬場か民営の火葬場か、またお住まいの地域によって費用は大きく異なります。公営の場合、住民であれば無料~数万円程度、民営の場合は5万円~15万円程度が目安となります。
【項目別】神道葬儀(神葬祭)と仏式葬儀の費用比較
神道の葬儀「神葬祭」と仏式の葬儀、費用面でどちらが高い・安いかは、葬儀の内容や規模によって大きく異なるため一概には言えません。しかし、費用の内訳を項目ごとに比較することで、それぞれの特徴が見えてきます。
祭祀料 vs お布施(戒名料含む)
宗教者へのお礼は、葬儀費用の中でも大きな割合を占める要素です。
- 神道(神葬祭)の場合:祭祀料(さいしりょう)
神職(神主)へ葬儀の斎行(儀式を取り仕切ること)や祝詞(のりと)の奏上に対する謝礼として祭祀料を納めます。これは仏式の「お布施」にあたるものです。金額の目安は、依頼する神職の人数などによって変動しますが、一般的に15万円~50万円程度が相場とされています。この他に、御車代(交通費)や御膳料(食事代)が別途必要になる場合もあります。
また、神葬祭では「玉串料(たまぐしりょう)」という言葉も使われますが、これは参列者が遺族に渡す香典の意味合いと、遺族が神職へ謝礼として渡す(祭祀料と同じ意味合い)場合があります。 - 仏式の場合:お布施(戒名料含む)
僧侶へ読経や儀式の執行に対する謝礼としてお布施を納めます。お布施には、読経料の他に戒名料が含まれることが一般的です。戒名は、故人の信仰の深さや社会的な貢献度などによってランクがあり、それによって費用が大きく変動します。一般的な戒名であれば数万円から、ランクの高い戒名では数十万円、場合によっては100万円を超えることもあります。読経料と合わせたお布施全体の相場は、20万円~数十万円程度が目安ですが、これも寺院や地域、戒名のランクによって大きく異なります。 - 比較のポイント
「神式は戒名料がないから安い」と単純に考えるのは早計です。祭祀料もまとまった金額が必要であり、依頼する神職の人数や格式によっては、仏式のお布施と同等かそれ以上になる可能性もあります。ただし、仏式のように戒名のランクで費用が大きく変動するという要素は少ないため、費用の予測は立てやすいかもしれません。
祭壇・装飾費用
葬儀の場を設える祭壇や装飾にも違いがあります。
- 神道(神葬祭)の場合
一般的に、白木で作られたシンプルな神式祭壇が用いられます。仏式のような煌びやかな装飾はあまり行いません。ただし、祭壇には神饌物(しんせんもの)と呼ばれる海の幸、山の幸、お酒などのお供え物や、玉串(たまぐし)(榊の枝に紙垂をつけたもの)など、神式特有のものを用意する必要があります。 - 仏式の場合
白木祭壇のほか、生花で飾る花祭壇など、種類が豊富です。宗派の様式や故人の遺志、遺族の希望に合わせて、比較的自由度が高く、華やかに飾ることも可能です。 - 比較のポイント
祭壇自体の費用は、シンプルな神式の方が抑えられる傾向にあるかもしれません。しかし、神饌物などの費用が別途かかる点を考慮する必要があります。一方、仏式は祭壇の種類や装飾の自由度が高いため、費用を抑えることも、逆に費用をかけることも可能です。葬儀社やプランによっても内容は大きく異なるため、一概にどちらが安いとは言えません。
その他(会場・飲食など)
会場費や飲食費など、宗教形式に関わらず共通してかかる費用もあります。
これらの共通費用の特徴:
- 宗教形式による金額差はほとんどない:会場使用料、火葬料、遺体搬送・安置費用、返礼品費用、飲食費用(通夜振る舞いや直会/精進落としなど)は、神式・仏式どちらの形式を選んでも、条件が同じであれば費用に大きな差は出ません。
- 変動要因は規模や内容:これらの費用は、葬儀の規模(参列者数)、会場のグレード、料理の内容、返礼品の品物などによって大きく変動します。
したがって、これらの費用項目については、宗教による違いよりも、どのような葬儀を行いたいかという内容によって総額が変わってくると言えます。
神道葬儀(神葬祭)の費用を抑えるためのポイント
神道葬儀(神葬祭)は、内容によって費用が大きく変動します。少しでも費用負担を軽減したい場合、いくつかのポイントを見直すことで調整が可能です。ここでは、具体的な方法を5つご紹介します。
葬儀の規模・形式を見直す(家族葬・一日葬など)
葬儀費用に大きく影響するのが、葬儀の規模と形式です。
- 参列者の人数: 参列者が多いほど、会場費、飲食費、返礼品費などがかさみます。家族葬のように、近親者のみで小規模に行うことで、これらの費用を抑えられます。
- 葬儀の日程: 通常、神葬祭は通夜祭と葬場祭の2日間で行いますが、一日葬(通夜祭を行わない)や火葬式・直葬(儀式を最小限にし火葬を主とする)といった形式を選択すれば、会場使用料や人件費、飲食費などを削減できます。
ただし、形式によっては親族間の理解が必要な場合もあるため、事前に相談することが大切です。
祭壇や供物のグレードを検討する
神道で用いられる白木祭壇は、仏式に比べて比較的シンプルですが、大きさや装飾によってグレードがあり、価格も異なります。また、神様へのお供え物である神饌物(しんせんもの)も、内容や品数によって費用が変わります。
予算に合わせて、祭壇のグレードを控えめにしたり、神饌物の内容を葬儀社と相談して調整したりすることも、費用を抑える方法の一つです。
雅楽演奏の方法を検討する
神葬祭では、雅楽(ががく)の生演奏が行われることがあります。厳かな雰囲気を演出しますが、専門の奏者を手配するため、相応の費用がかかります。
費用を抑えたい場合は、CD音源などで代用できないか、葬儀社に相談してみましょう。葬儀社によっては、音源の利用が可能なプランを用意している場合があります。
会場を工夫する(公営斎場・自宅など)
葬儀を行う会場の費用も、総額に影響します。
- 公営斎場: 民間の斎場に比べて、利用料が比較的安価な傾向があります。お住まいの地域の公営斎場が利用可能か確認してみましょう。
- 自宅: もしスペースが確保でき、近隣への配慮が可能であれば、自宅で神葬祭を行うことも選択肢の一つです。会場費を大幅に節約できます。
ただし、神葬祭を行える会場は限られる場合もあるため、葬儀社や神職(神主)とよく相談することが重要です。
複数の葬儀社から見積もりを取る
同じ内容の神葬祭であっても、依頼する葬儀社によって費用は異なります。複数の葬儀社から見積もり(相見積もり)を取り、内容と費用を比較検討することが非常に重要です。
その際は、単に総額だけでなく、見積もりに含まれるサービス内容の詳細(祭壇の種類、必要な物品、人件費など)をしっかり確認しましょう。また、神葬祭の実績が豊富な葬儀社を選ぶことも、スムーズな進行と適正な費用で執り行うためのポイントです。
神道葬儀(神葬祭)の流れと各段階での費用
神道の葬儀である神葬祭(しんそうさい)は、仏式とは異なる儀式で構成されます。ここでは、一般的な神葬祭の流れと、それぞれの段階でどのような費用が発生する可能性があるのかを解説します。葬儀全体の費用は、これらの儀式をどこで、どのくらいの規模で行うかによって変動します。
通夜祭・遷霊祭(せんれいさい)
- 通夜祭(つやさい):仏式のお通夜にあたる儀式です。故人の御霊を慰め、守護を祈ります。夜通し行われることもあります。
- 遷霊祭(せんれいさい):御霊遷し(みたまうつし)とも呼ばれ、故人の御霊を遺体から霊璽(れいじ:仏式の位牌にあたる白木の依り代)に移すための重要な儀式です。通常、通夜祭の後、葬場祭の前に行われます。
- 費用との関連:これらの儀式を行うための会場費(斎場や自宅)、祭壇の費用、神饌物(しんせんもの:お供え物)の費用、そして儀式を執り行う神職への謝礼(祭祀料)などが関連してきます。
葬場祭(告別式にあたる)
葬場祭(そうじょうさい)は、仏式の葬儀・告別式にあたる、神葬祭の中心となる儀式です。故人に最後の別れを告げ、その功績を称え、御霊の平安を祈ります。弔辞の奉読や玉串奉奠(たまぐしほうてん)などが行われます。
- 費用との関連:通夜祭・遷霊祭と同様に、会場費、祭壇費用、神饌物費用、玉串の費用、神職への謝礼(祭祀料)がかかります。また、参列者への返礼品費用もこの段階で考慮されることが多いです。雅楽の生演奏などを依頼する場合は、雅楽演奏費用も必要になります。
火葬祭・埋葬祭
- 火葬祭(かそうさい):火葬場にて、ご遺体を火葬する前に行われる儀式です。
- 埋葬祭(まいそうさい):火葬後の遺骨を墓地に埋葬する際に行われる儀式で、仏式の納骨式にあたります。神道では、遺骨は五十日祭(後述)を目安に埋葬されることが多いです。
- 費用との関連:火葬場の利用料、骨壷の費用がかかります。埋葬祭では、墓地・墓石に関する費用(すでにある場合は管理費など)、神職への謝礼(祭祀料)が必要になる場合があります。
帰家祭(きかさい)と直会(なおらい)
- 帰家祭(きかさい):火葬や埋葬から戻った際、家に入る前に塩や水で身を清め、家の中の霊前(仮祭壇など)に葬儀が無事終了したことを報告する儀式です。
- 直会(なおらい):帰家祭の後に行われる宴席で、仏式の精進落としにあたります。神職や参列者、親族などを労い、故人を偲びながら食事を共にします。
- 費用との関連:直会を行う場合、その飲食費用がかかります。参加人数分の料理や飲み物の手配が必要です。
式年祭(十年祭、五十年祭など):仏式の法要にあたる
神道では、仏式の法要にあたる式年祭(しきねんさい)または霊祭(れいさい・みたままつり)と呼ばれる追悼儀礼を行います。亡くなった翌日から数えて十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭(ここで忌明けとされることが多い)、百日祭と続き、その後は一年祭、三年祭、五年祭、十年祭、二十年祭、三十年祭、四十年祭、五十年祭(ここで弔い上げとなることが多い)、百年祭と続きます。
- 主な式年祭(霊祭):
- 五十日祭(ごじゅうにちさい):忌明けの重要な儀式。納骨(埋葬祭)をこの日に行うことも多い。
- 一年祭(いちねんさい):仏式の一周忌にあたる。
- 三年祭、五年祭、十年祭…:節目の年に行われる追悼儀礼。
- 費用との関連:式年祭を行う際には、神職への謝礼(祭祀料)(1回あたり3万円~5万円程度が相場)、会場費(自宅以外で行う場合)、お供え物(神饌物)の費用、参列者をもてなす場合は直会の飲食費用などが必要になります。
【参列者向け】神道葬儀(神葬祭)の玉串料(香典)マナー
神道の葬儀である神葬祭(しんそうさい)に参列する際、仏式の香典にあたるものとして「玉串料(たまぐしりょう)」を持参します。ここでは、参列者として知っておきたい玉串料の金額相場、包み方、表書き、そして渡す際のマナーについて、分かりやすく解説します。
玉串料の金額相場(故人との関係性別)
玉串料として包む金額は、故人との関係性やご自身の年齢、地域などによって異なりますが、一般的には仏式の香典と同程度と考えてよいでしょう。以下に、関係性に応じた一般的な金額の目安を示します。
玉串料の目安(関係性別):
- 両親: 5万円~10万円
- 兄弟姉妹: 3万円~5万円
- 祖父母: 1万円~5万円
- おじ・おば: 1万円~3万円
- その他の親戚: 5千円~1万円
- 友人・知人: 5千円~1万円
- 会社関係者(上司・同僚・部下): 5千円~1万円
- 隣人など: 3千円~5千円
これらはあくまで目安です。ご自身の状況や故人との関係の深さを考慮して金額を決めましょう。迷った場合は、周りの方と相談するのもよいでしょう。
玉串料を入れる袋の種類(のし袋)
玉串料は、不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)または白無地の封筒に入れて渡します。不祝儀袋を使用する場合、以下の点に注意して選びましょう。
不祝儀袋を選ぶ際のポイント:
- 水引の色: 黒白または双銀(そうぎん)のものを選びます。双白(白一色)も使われます。
- 水引の結び方: 結び切りまたはあわじ結び(鮑結び)を選びます。これらは「一度きり」を意味する結び方です。蝶結びは弔事には使いません。
- 袋のデザイン: 蓮の花が描かれているものは仏教用のため、神道では使用しません。十字架や華美な装飾があるものも避け、シンプルなデザインを選びましょう。
- 金額とのバランス: 包む金額に合わせて袋の格を選びます。一般的に、5千円程度までなら水引が印刷されたもの、1万円以上なら実物の水引がかかったもの、3万円~5万円程度なら双銀の水引、それ以上の金額なら和紙などの素材も上質なものを選ぶとよいでしょう。
白無地の封筒を使う場合は、郵便番号欄などがない、完全に無地のものを選びます。
表書きの書き方(御玉串料・御榊料など)
不祝儀袋の表書きは、水引の上段中央に目的を、下段中央に自分の名前をフルネームで書きます。
表書きの書き方:
- 目的(上段): 最も一般的なのは「御玉串料(おたまぐしりょう)」です。その他、以下の書き方も使えます。
- 御榊料(おさかきりょう)
- 御神前(ごしんぜん)
- 御霊前(ごれいぜん) ※「御霊前」は宗旨宗派を問わず使えるとされることもありますが、神道では「御神前」や「御玉串料」がより適切です。
- 名前(下段): 水引の下中央に、上段の文字より少し小さめにフルネームで書きます。連名の場合は、右から目上の人の順に書きます(夫婦の場合は夫の名前を中央に書き、左側に妻の名前のみを書くのが一般的)。
- 墨の色: 濃い墨の筆ペンまたは毛筆で書くのが一般的です。(仏式では薄墨を使うことが多いですが、神式では濃墨で問題ありません。)
中袋(内袋)がある場合は、表面中央に包んだ金額を旧漢字(例:金壱萬圓也、金伍仟圓)で書き、裏面左下に住所と氏名を書きます。中袋がない場合は、不祝儀袋の裏面左下に住所と金額を書き添えます。
渡す際のマナーと注意点(忌み言葉など)
玉串料を渡す際は、以下の点に注意しましょう。
玉串料を渡す際のマナー:
- 持参方法: 袱紗(ふくさ)に包んで持参します。紫や紺、深緑などの寒色系の袱紗が弔事には適しています。
- 渡し方: 会場の受付で記帳を済ませた後、「この度はご愁傷様でございます」といったお悔やみの言葉を述べ、袱紗から不祝儀袋を取り出し、相手から見て正面になるように両手で渡します。
- 忌み言葉を避ける: 会話の中では、不幸が重なることや続くことを連想させる言葉(重ね言葉、続き言葉)、生死に関する直接的な表現は避けます。
- 重ね言葉の例: 重ね重ね、くれぐれも、ますます、たびたび
- 続き言葉の例: 再び、引き続き、追って、なお
- 直接的な表現の例: 死ぬ、急死、生きていた頃、四(し)、九(く)
- 仏教用語を使わない: 神道独自の死生観があるため、仏教で使われる言葉は避けるのがマナーです。
- 避けるべき仏教用語の例: 成仏、冥福、供養、往生、回向 など
- お悔やみの言葉の例: 「ご冥福をお祈りします」ではなく、「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」「安らかにお眠りになられますようお祈り申し上げます」といった表現を使います。
これらのマナーを守り、故人を偲び、ご遺族に弔意を伝えましょう。
神道葬儀(神葬祭)を行う際の注意点
実際に神葬祭を行うにあたり、仏式とは異なる点も多いため、いくつか事前に知っておきたい注意点があります。スムーズな準備と進行のために、以下の点を押さえておきましょう。
神葬祭に対応できる葬儀社・神職(神主)の探し方
神葬祭は仏式の葬儀ほど一般的ではないため、対応できる葬儀社や神職(神主)を探す必要があります。
葬儀社と神職を探す際のポイント:
- 葬儀社選び: 神葬祭の施行経験が豊富な葬儀社を選びましょう。神式の祭壇の準備や儀式の進行、必要な道具(玉串など)の手配に慣れているか確認することが大切です。インターネット検索や葬儀社紹介サービスを利用するほか、もし付き合いのある神社があれば、紹介してもらうのも良い方法です。
- 神職(神主)探し: まずは、故人やご自身の氏神様(地域を守る神社)や、家系的に縁のある神社に相談してみましょう。特にお付き合いのある神社がない場合は、葬儀社に相談して紹介を受けるか、地域の神社庁に問い合わせてみる方法があります。神職への依頼は早めに行うようにしましょう。
事前の相談・見積もりの重要性
神葬祭の費用は、葬儀の規模や内容、依頼する神職や葬儀社によって大きく変動します。後で「想定外の費用がかかった」とならないために、事前の相談と詳細な見積もりは非常に重要です。
相談・見積もりで確認すべきこと:
- 複数の葬儀社から見積もりを取る: 可能であれば複数の葬儀社から見積もりを取り、内容と金額を比較検討しましょう。
- 見積もり内容の詳細確認: 葬儀プランに何が含まれ、何が含まれていないのか(特に祭祀料、神饌物、雅楽費用など)を細かく確認します。神職への謝礼(祭祀料、御車代、御膳料)が葬儀費用に含まれているか、別途用意する必要があるのかも必ず確認してください。
- 追加費用の可能性: 見積もり以外に追加で費用が発生する可能性があるかどうかも質問しておきましょう。
- 希望を明確に伝える: 予算、参列者の人数、希望する儀式の内容などを具体的に伝え、納得できるまで相談することが大切です。
菩提寺がある場合の注意点
もし、ご先祖様のお墓が仏教寺院(菩提寺)にある場合は、特に注意が必要です。神葬祭で葬儀を行うこと、そしてその後の納骨について、必ず事前に菩提寺の住職に相談してください。
仏教と神道では死生観や儀礼が異なるため、菩提寺によっては神葬祭で葬儀を行った方の納骨を受け入れてもらえないケースがあります。相談なく神葬祭を進めてしまうと、後々納骨を断られる、あるいは檀家関係が悪化するといったトラブルに発展しかねません。
菩提寺の理解を得ることが難しい場合は、公営霊園や宗教不問の民間霊園など、新たにお墓を探す必要が出てくる可能性も考慮しておきましょう。
まとめ
この記事では、神道葬儀(神葬祭)の費用について解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
神道葬儀(神葬祭)の費用のポイント:
- 費用相場: 全体の目安は約80万~140万円程度に加えて、神職への謝礼(祭祀料など)が別途必要になることが多いです。
- 費用の内訳: 祭祀料や玉串料、神饌物など、神道特有の費用項目があります。
- 仏式との比較: 戒名料は不要ですが、「神式=安い」とは限りません。葬儀全体の費用で比較検討することが大切です。
- 費用抑制: 葬儀の規模、祭壇のグレード、雅楽の有無、会場選びなどで費用を調整できます。
- 参列者マナー: 香典は「玉串料」として用意し、不祝儀袋の選び方や表書き、忌み言葉(特に仏教用語)に注意が必要です。
- 実施前の注意点: 神葬祭に対応できる葬儀社・神職を探し、詳細な見積もりを取り、菩提寺がある場合は必ず事前に相談しましょう。
神道葬儀(神葬祭)は、日本の伝統的な弔いの形の一つです。費用やマナーについて正しく理解し、故人を偲び、心静かにお見送りできるよう、この記事の情報が少しでもお役に立てば幸いです。